ジョーは北京大学を卒業後、Microsoft Research Asia で機械学習の研究に携わり、その後 EY で Web3 ソリューションアーキテクトとして日本最大級の銀行と仕事をした。その後デジタルヒューマンのスタートアップを立ち上げ、2025 年に 樹林AI に入社した。

ジョーと AI の付き合いは、この部屋にいるほとんどの人よりずっと長い。2010 年、Microsoft Research Asia の機械学習リサーチインターンとしてキャリアを始めた。モデルの学習や推論に取り組んでいた。
その後、2017 年に Web3 が登場し、彼をまったく別の方向へ引き込んだ。友人が莫大なお金を稼ぐ姿も見た。一方で、刑務所に入る人たちも見てきた。
「Web3 の世界には投機が多すぎる。ただトークンで一攫千金を狙う話じゃない。お金を前にした人間の行動が本当によく見える世界なんだ。あの世界にいる人たちは、最先端や未知の領域を追いかけている人が多い。自分が AI に戻ってきた理由は、大規模言語モデルの流れだった。」
ジョーは、AI は Web3 と決定的に違うと考えていた。確かに新しい技術ではある。でも、それと同時に、すぐ実用になる技術でもあった。
ジョーは 2012 年から東京で暮らしている。14 年以上にわたって技術に慎重な国を内側から見てきて、日本企業は「技術がすごいから」という理由だけでは新しい技術を採用しないことを学んだ。価値が実務に結びつかなければならない。既存の業務フローに組み込めなければならない。そして実際にその仕事を担当する人たち自身が、「これは自分たちの役にも立つ」と信じなければならない。
「日本は全体的に、本当に、本当に遅い。技術の導入が遅い。新しい技術を追いかけるスピードが全体的に遅すぎる。」
多くの人はそれを問題だと考える。でも、2017 年のブロックチェーンでも、今の AI エージェントでも、ジョーの仕事は外から見ると最先端に見えるものを、実際の会社の中で使えるものへ変えることだと分かっている。
「AI は Web3 と同じで派手に見える。でも大企業の人たちは、新しい技術のすごさや面白さの 5〜10% くらいしか理解できない。だから自分の仕事は、それを説明し、納得してもらい、実際の業務フローに組み込んで、本当の価値を届けることなんだ。」
樹林AI に入社する前、ジョーはデジタルヒューマンのスタートアップを立ち上げた。実在する人をデジタル版の本人に変換し、その技術をインフルエンサー向けに販売するというアイデアだった。
彼はプロダクトをすべて一人で作った。
「会社で開発者は自分一人だった。バックエンドも、フロントエンドも、プロダクト全体も、全部一人で作った。インフルエンサーに売ろうとしたけど、技術が進みすぎていた。登録者 100 万人以上の大物インフルエンサーや、Instagram のフォロワーが 500 万人いる人たちとも話したけど、みんな法務チームを持っていた。彼らは一緒に収益を生み出せるビジネスだとは考えなかった。こちらが彼らを利用しようとしていると思われてしまった。」
プロダクト自体は技術的にとても面白かった。でも市場は、ジョーが思っていた形ではまだそれを買う準備ができていなかった。彼らはチャンスよりもリスクを先に見ていた。新しい収益源よりも、「利用されるのではないか」という不安のほうが大きかった。
「一番の失敗は、先に売らなかったこと。先に作ってしまったことだった。Rise にも『先に売って、それから開発して、本当にプロダクトを作れ』と言われていた。でも言い訳ばかりしていた。『今回は違う』『デジタルヒューマンは特別だ』と思っていた。でも実際は何も違わなかった。今では、本当に成功するスタートアップはみんな最初に売るものだと信じている。」

ジョーは、以前に一緒に住宅設計の自動化プロジェクトへ取り組んだことがあり、その頃から Rise を知っていた。
その後、ジョーは現在 樹林AI 日本法人代表取締役を務める 翔 を Rise に紹介した。
2024 年 9 月、3 人が初めて一緒に座って話した日のことを、彼は今でもよく覚えている。相性の良さはすぐに分かった。
「会うたびに、Rise と 翔 が 樹林AI の進捗を話してくれた。エンジニアリングが進んだこと、大きな顧客が契約したこと、新しい出来事があったこと。一方で自分も、『自分の会社も順調だよ』という話をしていた。でも毎回感じたのは、翔 がどれだけこの仕事を好きで、この新しい環境を心から楽しんでいるかということだった。」
当時のジョーは、まだ自分の会社を経営していた。
でも 樹林AI の話を聞けば聞くほど、Rise と 翔 が一緒に作っているものに惹かれていった。
「その関係性に憧れた。そこへ加わって、3 人でもっと強いチームになりたいと思った。それぞれとは以前から関係があったけど、3 人が一緒になれば何か面白いことが起こる気がした。」
以前のスタートアップも共同創業者は 3 人だった。でも、そのうち 2 人はアメリカに住んでいて、実際に会ったのは一度か二度だけだった。仕事のほとんどはリモートだった。
樹林AI は違った。Rise、翔、ジョーは毎週会うことができた。同じ場所で肩を並べて働けた。その関係性は、実際に築いていけるものだった。
「断言できるけど、自分が 樹林AI に入社した一番の理由は Rise と 翔 だった。もちろん、今スタートアップに入るなら AI は間違いない選択だ。でも、それはほんの一部に過ぎなかった。一番大きかったのは人だった。二人の友人との関係だった。」
「自分はずっと、ゼロからイチを作ることに集中してきた。その創造するプロセスが大好きなんだ。自分がやらなければ存在しないものを作る。そしてゼロからイチを作ったら、そのイチを他の人たちへ渡して、50 や 100 に育ててもらう。ずっとゼロイチだけに集中してきた。」
ジョーはずっと、自分を「物事を始める人」「可能性を証明する人」「不可能を可能にする人」だと思っていた。でも、そのアイデンティティは 樹林AI に入ってから変わった。
「樹林AI に入ってからは、自分が一番すごいとか、一番頭がいいとか、リーダーだとか、そんなことを証明する必要はなくなった。実際、ここにいる全員が自分より賢い。本当にそう思う。みんな頭の回転がものすごく速い。『自分にしかできない』ことを証明する意味なんてない。自分は少しずつ、イノベーターから、本当の価値を顧客へ届ける人へ変わっていった。」
今の彼の仕事は、何かの最初のバージョンを作ることだけではない。それを顧客の業務フローの中で、本当に役立つものにすることだ。顧客の言葉、制約、チーム体制、期待に合わせて、使える形へ落とし込むことだ。
ジョーにとって、本当の価値を届けるということは、自分たちの言葉を相手に理解してもらう前に、まず顧客の言葉を学ぶことを意味している。
「単にプロダクトを良くするという話じゃない。プロダクトとしての価値も、人間関係としての価値も含めて、お客さんを満足させることなんだ。そのためには、本当に相手の言葉で話さなければいけない。プロジェクトの最初は、そもそも同じ言葉を話していないこともある。相手にこちらへ合わせてもらうんじゃない。こちらが相手に合わせる。相手の言葉を学んで、その言葉で話すんだ。」
ジョーがよく目にするのは、経営陣と実際に実行するチームとの間にあるギャップだ。
経営陣は AI が重要だと理解している。このまま AI を無視していては会社が取り残されることも分かっている。でも日本の大企業では、その意思決定が組織のトップから実際の担当者まで、そのまま伝わるとは限らない。
「伝統的な企業のトップは毎日ニュースを見ている。OpenAI が何なのかも、Anthropic が何なのかも知っている。何が起きているかも分かっている。そして『うちは遅れている。この流れに追いつかなければいけない。変わらなければいけない』という危機感も持っている。でも組織そのものが、そのトップの考えを効率よく現場まで反映できる構造になっていない。」
中国と比べると、その違いはさらに分かりやすい。
「中国では CEO がすべてだ。CEO が何か言えば、みんなその通りに動く。でも日本は違う。CEO は自分の考えを中間管理職を通して現場まで伝えなければいけない。そして中間管理職は、自分の立場や役職、収入を気にしている。日本では基本的に、みんな安定を一番大切にする。」
その結果、経営陣は AI 変革に期待して契約を結ぶ。でも実際の仕事は、その意思決定に関わっていなかった中間管理職やチームリーダーへ降りていく。そして彼らにとっては、それは「仕事が増える」「リスクが増える」「自分の優先事項ではない」と映ってしまう。
ジョーは、そのプロジェクトが彼ら自身にとっても意味のあるものになるようにすることで、この問題に向き合っている。
「このプロジェクトを大成功させれば、その人自身も次のステージへ進めるかもしれない。マネージャーになれるかもしれない。そういう本当の意味で相手のためになるところまで考えられれば、その人はオーナーシップを持って本気で取り組んでくれる。」
もうひとつ、現実的なリソースの問題もある。
AI エージェントは、魔法のように勝手に賢くなるわけではない。業務知識、社内の文脈、顧客特有の言葉、業務フロー、例外ケース、そして継続的な改善が必要になる。樹林AI がシステムを構築・設定することはできる。でも、その会社だけが持っている知識は、その会社自身が提供しなければならない。
「エージェントを本当に使えるものにするために、改善やチューニングを一緒に進められる人が社内にいることを確認しなければいけない。お客さんの会社のビジネスモデルを隅々まで理解している人は、社外にはいない。自分にもその専門知識はない。その知識を提供できるのは、その会社の人だけなんだ。だから、そういう人たちがちゃんと存在することが重要なんだ。」
ジョーは、「変わった顧客の要望」というものは存在しないと考えている。どんなに奇妙に見える要望でも、その裏には必ず理由がある。
日本最大級の不動産会社の一社が、樹林AI に持ち込んだ相談は、典型的な AI エージェントの活用例とはまったく違っていた。問い合わせメールを処理したいという相談だった。メールへ自動返信したいわけでもない。人を置き換えたいわけでもない。顧客と最初から最後まで会話する AI エージェントを作りたいわけでもなかった。
彼らが欲しかったのは、メールを受信し、その内容を解析し、適切なベンダーへ振り分け、グループチャットを作成し、関係者を自動で追加する仕組みだった。
この機能で使われている AI の能力は、全体の 5% 程度に過ぎない。でも顧客にとって重要なのは、「どれだけ AI を使ったか」ではなく、「業務フローがどれだけ楽になったか」だった。
調達管理では、この会社は常に顧客とベンダーの間に立って仕事をしている。誰かが問い合わせ内容を理解し、適切なベンダーを見つけ、必要な人たちを集め、仕事が止まらないよう進め続けなければならない。そのマッチングと調整の部分を自動化することは、派手な AI デモには見えなくても、本当に価値のあることだった。
「最初に思い浮かぶのは、Rise が書いたハンドブックだ。あのハンドブックそのものがカルチャーなんだ。細かいこともたくさん書かれているけど、創業者として本当に伝えたい考え方もたくさん詰まっている。仕事のことだけじゃない。すごく哲学的な内容もあって、考え方や人としての成長にもすごく役立つ。」
もうひとつは、「成功させる」という考え方だ。これは、日本語の「成功させる」から来ていて、「相手が成功できるようにする」という意味を持っている。
顧客を成功させる。チームを成功させる。会社を成功させる。
その考え方は、今ではジョーの日々の仕事にもそのまま流れている。
常に『どうすれば相手が成功できるか』を考える。相手が成功するなら、自分の役割なんて二の次でいい。例えば、自分が一人のエンジニアを 樹林AI に紹介したことがある。その人がトライアルに来たとき、自分の仕事は入社を説得することじゃなかった。カルチャーを理解してもらい、環境に馴染んでもらい、成功できるように手助けすることだった。
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樹林AI は、高パフォーマンス企業の中核を担う次世代 AI エージェントを提供しています。当社のテクノロジーは、メール、電話、メッセージングなどのビジネスコミュニケーションと、それに伴うワークフローを自動化し、人と組織の創造性を解き放ちます。
創業僅かで、日本で最も急成長する AI 企業のひとつとして注目を集め、現在は日本、韓国、シンガポールに拠点を展開。アジア太平洋地域全体を、よりエージェンティックで持続可能な未来へと導いています。東京都民の日常生活に関わる主要企業をはじめ、複数の大手企業に導入されており、既存のツールやシステムとシームレスに統合。100以上の言語でタスクを実行し、労働力不足の課題を解決しながら、チームがより戦略的で高付加価値な活動に集中できる環境を支援しています。
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